対談

元 野村総合研究所(NRI)
常務執行役員 中村昭彦さんに聞く

3
.

弊社発行のタブロイド紙
『Re・Birth!7th ANNIVERSARY Winter2020』
に掲載した記事をご覧いただけます。

古川が前職でお会いした野村総合研究所(以下NRI)の常務執行役員 中村昭彦さん。中村さんは当時「中村塾」を通じて、NRIに “ユーザー目線”を根付かせた方です。塾は「いわしの会」と呼ばれ、その評判は外部の古川にも届いていました。いつか塾を開いてほしい。古川の念願はようやくかないました。2017年、リ・バースで1日だけの中村塾が開催され、参加者からは“考え方が変わった”という声がたくさん寄せられました。この良いお話を、もう一度皆さんに聞いてほしいため、改めておうかがいしました。

3
.

これからのIT業界で

普遍の人間力を磨いて価値競争へ

古川

いまのリモート環境は放っておくと、ただの作業員になってしまう危険性を孕んでいると思っていて、その集まりになってしまったら、それこそ価格競争に巻き込まれてしまいます。リ・バースはサービス業として、いかにお客さまに寄り添えるか。ここに価値を見出していかないと思っているのですが、中村さんはどうお考えですか?

中村

リ・バースには価格競争ではなく、価値競争に入ってほしいですね。お客さまから相談を受けたり、提案して喜ばれる本当のパートナーになってほしい。そのためには一人ひとりがお客さまから頼られる存在になることです。お客さまと同じ目線、同じ情報、お客さま以上の方法を学んでいかないといけない。お客さまが属している市場、それは社会に属しているので、社会情勢も世界情勢も知識は必要です。そしてITという社会インフラを担っているのがシステムエンジニアですから、インフラを担っている自覚、責任、プライドをもって、自分たちの役割を語れるようでないと発想は狭くなるし、知恵も出ません。一見、今日の仕事に関係ないことも持続的に求めていってほしいと思います。

古川

エンジニアであるまえに社会人として一人前になれ、と。

中村

そうです。エンジニアはうっかりすると、専門知識や技術だけで、人間づくりの部分は忘れがちになるのですが、両方必要なんです。

古川

人間の部分は時代が変わっても普遍ですよね。

中村

技術は進化していきますが、人間は変わりません。

古川

では、人間力をつけるためには何をしたら良いですか?

中村

先日、人間力向上をテーマにしたセミナーでも話したのですが、ビジネスで求められる人間力は、パートナーとして一緒に仕事ができるかということです。その点から考えると、5つあると思っています。まず1つ目は「基本動作」です。挨拶をする。時間を守る。嘘をつかない。これ新入社員はできるのですが、歳を重ねていくと疎かになっていく。実は最初の一歩で最後の一歩でもある。それくらい重要なんです。2つ目は「視野を広げましょう」。視野を広げて、知識を増やす、情報を取る。すると発想が広がりますよね。3つ目は「視点を高くしましょう」。視点を高くすると判断基準が変わります。例えば、低い視点は自分たちの利益。高い視点は社会貢献。極端な例ですが、高い視点になれば、利益にはならないけれど社会のためになるからやってみようと判断ができますよね。4つ目は「多様な価値を身に付ける」。これは相手目線と一緒です。世の中の価値観は十人十色。自分と異なる価値観を理解して認めて、会話できるようになりましょうということです。最後の5つ目は思考力、考える力です。ビジネスは成功を収めないといけませんよね。そこで問われるのは、どうすれば勝てるか、成功するかを考える力なんです。これは継続的に磨いて深めていく努力をしつづけなければなりません。以上が、ビジネスにおける人間力の基本となります。でも、これらは人と会話したときに感じる部分なんですね。この人、ちゃんと挨拶してくれるな。視野が広いな、高いな。こちらの考えを受け入れてくれるな。深く考えているんだなと。

古川

なるほど、この人は信頼できる、と思われるようになる。

中村

そうです。中村塾を開いた理由はそこにあるんです。僕がNRIで唯一赤字の事業本部に来たとき、百数十人いる本部員は戦々恐々だったと思うんです。発注側の会社の役員が乗り込んで来たわけですから(笑)。そこで僕が第一声で発したのは「赤字だけど、売上や利益は一切考えなくて良いから」と。

古川

構えていたメンバーからすると、意外でしたね。

中村

「とにかくやれ!」みたいな号令をかけられると思っていたのでしょうね。僕はつづけて「その代わり一つだけお願いがある。お客さまとの信頼関係をともかくつくってほしい。お客さまから信頼される百数十人になってくれたならば、自ずと売上と利益はついてくる。もし、ついてこないとすれば、その責任は本部長の私にある。君たちにはない」と。

古川

やはり、信頼関係づくりなんだ、と。

中村

はい。それで、信頼関係をつくるためにはどうしたらいいのか。その知見やマインドを本部員のみんなにインプットしたくて中村塾を始めたんです。約5年間、月1回、夕方から2時間ほど開催してきましたが、一貫した目標は“信頼関係をつくりにいく”ことでした。

古川

その結果、中村さんの率いる本部員の目線が変わり、黒字化を果たした。

中村

えぇ、赤字の事業本部は誰も引き受け手がいなくて。当時55歳の僕は何も失うものはないと思って、どうぞやりますよ、と引き受けたんです。

(つづきます)

Re・Birth Recruit Page

TOPへ戻る